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白熱電球(豆電球)とLED

目次

抵抗を使わなくても電球が壊れないのはなぜか

小学校の理科で電気回路の実験をするときには、回路に白熱電球(豆電球)をつなげます。あの実験では、乾電池、銅線(ワイヤー)、電球を回路として接続して、電球を点灯させます。回路の中に抵抗は使いません。つまり、回路に抵抗を接続しなくても、電球は壊れません。しかし、抵抗なしのまま、電球をLEDに置き換えると、LEDは焼き切れて壊れます。だから、必要以上の電圧をかけてLEDを使うときには、必ず抵抗を回路に接続しなければなりません(「LEDを点灯させる回路に抵抗が必要な理由」を参照)。「豆電球は壊れないのになぜLEDは壊れるのか」は、実にもっともな疑問で、子どもがこの疑問を口にしたら大いに褒めてあげるべきです。よく気づいたね、と。

回路に抵抗がなくても電球が焼き切れない理由は、電球自体の抵抗値が高いからです。これにより、電球に流れ込んでくる電流を、電球自身が抑えることができます。想定する電圧の範囲内であれば、流れ込む電流を抑えて焼き切れないように、抵抗値がうまく設定されているのです。一方、LEDはそのようなことはせずに、流れ込んでくる電流はそのまま使います。そして、電流がLEDの許容量を越えると焼き切れます。

電球の中には「フィラメント」という部品があり、電球に流れ込む電流はこのフィラメントを(電気的に)高温にして光らせています。フィラメントの材料はタングステンで、この金属は常温では抵抗値が低く、高温になると抵抗値が高くなる性質があります。スイッチを入れて電球に電流を流すとき、タングステンの抵抗は低くなっているので電流をどんどん流します。このとき、抵抗値の低い状態の電球を挟んで電源の+と-が回路中でつながっているので、回路はショートしている状態です。タングステンの抵抗値は低いですが、銅(銅線)よりは高いので(3倍以上)、電圧はタングステンにかかり、タングステンの温度が上がり始めます(銅線の温度は上がらない)。温度が上がるにつれ光り始めます(電球が点灯する)。このまま温度が上がり続けると、いずれタングステンは焼き切れてしまいますが、高温になると抵抗値が高くなる性質のため、流入する電流を抑えることができます(最初にスイッチを入れた時の電流の1/8程度に抑えることができる)。そして、高温で発光しているが、焼き切れるほど高温ではない状態を維持します。これが、電球が光り続けている状態です。この状態を長時間維持できるように、タングステンの抵抗がうまく調節されているのです。簡単にいえば、タングステンの長さがうまく調節されています。

エジソンの伝記を読もう

エジソンが白熱電球を商用化したとき、フィラメントの材料は「炭化させた竹」だったそうです(京都の竹を使ったとのこと)。エジソンは数多くの材料を試しては失敗し、竹に辿り着くまでさんざん苦労したと、彼の伝記にはよく書かれています。これは、光るほど高温にしてもすぐには焼き切れず、高い抵抗値を持ちつつ伝導性があり、フィラメントのように細い形状にしても実用性を維持できる材料を探すのに苦労した、ということです。そんな「都合のよい」材料は世の中に存在しないのでは?と思わず、世界中探し回ったところがすごいですね。これを機に、お子さんとエジソンの伝記を読み直してはいかがでしょうか。読後感が少し変わるかもしれません。

白熱電球 v.s. LED

上記のように、白熱電球はとてもよくできているのですが、熱による発光を原理にしているので、電気エネルギーを可視光へ変換する効率がとても低いのが欠点です。電気エネルギーの大半を熱と赤外線の発生に使ってしまい、可視光の発生には10%程度しか使っていません。一方LEDは、熱による発光ではなく、電気エネルギーを直接光エネルギーに変換するため効率が高くなります。エネルギーを無駄にせずに発光するということは、電気の消費量が少なくなる(電気代が安上がりになる)ということです。また、LEDはフィラメントを使わないこともあって、構造が単純で大量生産に向いており、衝撃に強く寿命が長いという利点もあります。

電気回路の基礎を教える時に便利なのは白熱電球?

このように、白熱電球の出番は日常生活では皆無になりつつあり、ほぼ絶滅状態です。しかし、小学生くらいの子どもに電気回路の基本を教えるときは白熱電球(豆電球)の方が便利です。

LEDと電池を使って実験しようとする場合、電池の電圧1.5Vは普通のLEDには低すぎます(点灯しない)。直列に2個並べて3Vにすると、赤色LEDには高すぎます(壊れる可能性あり)。1.5Vで動作するLEDも存在しますが、電池を直列に2個並べたら電圧が高すぎます。小学校での豆電球を使った実験では、電池を2個直列につなぐと1個の時より豆電球の光が強くなり、2個並列につなぐと1個の時と変わらないということを確認しますが、LEDを使うとこれが自然にはできません。電池を直列につないだら急遽抵抗を使わなければならず、その理由を小学生に教えるのは難しいだろうと思います(電気回路の基礎の基礎だけを習おうとしている小学生に、電流と電圧の違い、抵抗、オームの法則を教えるのは時期尚早)。豆電球にかけられる電圧は1.1Vから2.5Vくらいが一般的で、電池1つでも点灯し、電池を2個直列につないでもすぐには壊れません。

あの豆電球がいかに高負荷か

こう考えてくると、あの豆電球がとても高い抵抗値を持っているのだと気づかされます。豆電球の定格電流は300mA程度で、その場合100mAくらいは電流を流さないと点灯しません。赤いLEDは約20mA以上流したら壊れる心配をしなければならないのですから、文字通り桁違いの抵抗値です。なにしろ、ラズパイ本体で使う電流が通常で約150mA、最大で250mAなので、豆電球がいかに電気を無駄に使っているかが分かります。ちなみに、ラズパイのGPIO一本から流せる電流は16mA以内と決まっています(複数ピンを同時に使う場合は全体で100mA以内)。ですから、ラズパイと豆電球をつないで電気回路実験をすることはできません。もしそれをやると、豆電球を1つしかつないでいないのに、ラズパイ自体が壊れる心配をしなければなりません。

白熱電球のフィラメントの仕掛けには関心させられます。電気回路実験でいろいろと使い回せる柔軟性にも驚きます。でも、やはり古い技術なのだなと思わされますね。

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