電気について:電圧、電流、電力など
目次
- 電気(Electricity)
- 電流(Electric current、current)
- 電圧(Voltage)
- 電力(Electric power、wattage)
- 電力量・消費電力(Electric energy、power consumption)
ラズパイで電子工作したついでに、電気の基本をお子さんに教えてみてはいかがでしょう。以下は、自分の子どもが小学4年から5年生の時に教えた時のメモです。ややこしいことはほぼ割愛し、話を猛烈に単純化しています。使っている例も、自分の子どもの身の回りから選んでいます。あしからず。。。
電気(Electricity)
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電気とは、世の中にある(世の中で使う)いろいろな種類のエネルギーのひとつ。エネルギーとは、機械に「お仕事」をさせるための特別な、目に見えない力(能力)。ランプの仕事は光を作ること、洗濯機の仕事はドラムを回して洗濯をすること、掃除機の仕事はモーターを動かして空気を吸うこと、テレビの仕事はテレビ番組や映画を映すこと、電話の仕事は電話をかけること、ラズパイの仕事はプログラムを動かすこと。機械は電気を使って(あるいは「飲んで」)仕事をする。
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電気は流れるもので、流れながら移動できる。電気は発電所で作られ、電線の中を流れて家のサーキット・ブレーカーまでたどり着く。そこから家の中に電線が枝分かれして入ってきて、アウトレットやランプにつながっている。アウトレットから、さらに電線を使ってテレビや洗濯機などの機械とつながっている。このように、発電所で作られた電気は、電線の中を流れて長い距離移動し、ようやく家の中の個々の機械までたどり着いている。
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電線につながっている機械のスイッチをオンにすると、その電線から機械の中に電気が流れて入ってきて、機械は電気を使う(飲む)。電気を使うと(飲むと)機械は仕事をする。機械のスイッチをオフにすると、機械は電気を使えないので(飲めないので)、仕事をやめる。
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電線を流れて家まで来る電気は、水道を流れて家まで来る水と同じようなもの。浄水場で作られた水は水道管を流れて家までたどり着き、枝分かれして、家の中の蛇口につながっている。蛇口を開けば水が出てきて、閉じれば水がとまる。
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電気は流れるものだが、止めることもできる。アウトレットに機械が電線でつながっていなければ、アウトレットの外に電気が漏れて出てくることはない(アウトレットが電気の流れをせき止めている)。水道の蛇口が水をせき止めていて、蛇口を開けないと水が出てこないのと同じ。また、機械とアウトレットが電線でつながっていても、機械のスイッチをオンにしないと、機械へ電気は流れない(スイッチが電気の流れをせき止めている)。
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電気は特別な入れ物に溜めることができる。電池がその例。電池の中には電気が溜まっていて、使いたいときにその電気を使うことができる。水筒みたいなもの。中に水をためておいて、飲みたいときにその水を飲める。充電池は特別な電池で、中身の電気が減ったら、後から足すことができる。水筒に後から水を足せるのに似ている。後から電気を足すことを充電という。
電流(Electric current、current)
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電気の流れ(フロー)、あるいは流れている電気のことを電流という。日常生活では電気と電流を区別しないことが多いが、流れに着目するときには電流という言葉を使う。
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工作や実験で電気を流すには、銅線(ワイヤ)で輪の形(ループ)を作って、銅線の両端を電源(electric power source)につなげる。このループのことを電気回路(electric circuit)という。身近な電源の例は電池。ラズパイも電源として使える。回路(circuit)には、電源とワイヤ以外に、いろいろな部品をつなげる。例えば、電球やLED、センサー、モーターなど。ここでは、電気回路と電子回路の違いは無視。
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電源には2つの口(あるいは穴)があって、そのひとつをプラス(positive)の口、もうひとつをマイナス(negative)の口と呼ぶ。電源の例として電池を見ると、出っぱっている方(端)がプラスの口で、平らな方(端)がマイナスの口。ラズパイを電源として使うときには、GPIOのピンがプラスの口になる。Ground(GND)のピンはマイナスの口になる。その他のピンは大体どれもプラスの口にすることができる。大人(専門家)は、この口のことを「端子(terminal)」と呼ぶ。
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電流(電気の流れ)には「向き」がある(直流の場合。交流は無視)。回路の中を流れる電気は、必ず決まった方向へ流れる。まず、電源のプラス端子(positive terminal)からワイヤへ電気が流れ出て、ワイヤの中を流れていき、ワイヤでつながっている部品それぞれに電気が届く。LEDに電気が届くと、LEDは電気を飲むので自分の仕事をする(光を作る)。モーターに電気が届くと、モーターは電気を飲むので自分の仕事をする(モーターを回す)。電気は回路の中のワイヤを通ってどんどん進み、最後には電源のマイナス端子に戻ってくる。
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電流の正確な定義(definition)は、1秒間に流れる電気の量のこと。この量のことを「電流の強さ(intensity)」と言うこともある。電流が強いというのは、1秒間に流れる電気の量が多いこと。電流が弱いというのは、1秒間に流れる電気の量が少ないこと。正確にいえば、電流とは電気の流れのレート(rate)のこと。
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レートの意味を理解するために、坂道を作って、上から水を流すことを考える。流しそうめんをするときの坂道(管)は幅が狭いから、一度に流せる水の量は少ない。公園の滑り台に水を流す場合、滑り台の幅は流しそうめんの管より広いので、一度に流せる水の量は多くなる。ウォーターパークのウォータースライドは幅がもっと広いので、一度に流せる水の量はさらに多い。この「一度に(1秒間に)流せる量」が流れのレート(flow rate)。もうひとつの例として、道路を走っている車を考える。道路に一車線しかなかったら、一度に走れる車の数は1。ハイウェイのように道路に5車線あったら、一度に走れる車の数は5。この「一度に(1秒間に)走れる車の数」が流れのレート(flow rate)。直感的には、流れのレートとは坂道や道路の幅のこと。つまり電流の定義とは、この「幅」のこと。
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電気も水と同じように坂道を流れている(見えないけど)。電流とは、1秒間に電気がどのくらい坂道を流れるか(flow rate)を表している。単位はアンペア(ampere, A)。アメリカ人は「アンプ(amp)」と呼ぶことが多い。アンペアが高いというのは、太いパイプに水がじゃぶじゃぶ一気に流れること。アンペアが低いというのは、細いパイプを水が少しづつチョロチョロ流れること。
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タブレットを充電するときに使う充電器(charger)は、コンセントから電気を受け取ってタブレットへ流して、タブレットの中の充電池を充電している。家にある充電器には、1A、2A、2.1A、2.4Aなどと書いてある。これは、その充電器がタブレットへ流す電流のレート(1秒間にどのくらいの電気をタブレットへ送っているか)を表している。1Aと2Aの充電器を比べると、2Aのものの方が1秒間に送れる電気の量が2倍になっている。つまり、充電のスピードが2倍だということで、充電時間は半分になる。短時間でタブレットを充電したければ、アンペア数(amperage)の高い充電器を使うべき。ラップトップのUSB差し込み口や、車の中のUSB差し込み口を使って充電するときには、0.5Aの電流しか流れていない。2Aの充電器と比べると、充電のスピードが1/4なので、充電時間は4倍かかる。
電圧(Voltage)
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水と同じように、電気も坂道を流れている(見えないけど)。坂道は、高さの高い場所と低い場所の間に作られていて、水は高い場所から低い場所へ流れる。流しそうめんをするときの坂道(管)のことを思い出すこと。電気も、高さの高い場所から低い場所へ流れる。電気が通る場所の高さのことを電圧という。電圧の単位はV(ボルト)。
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AAやAAAの乾電池には1.5 Vと書いてある。これは、乾電池のプラス端子の電圧が1.5 Vで、マイナス端子の電圧が0 Vだということ。つまり、プラス端子の方がマイナス端子より高い位置にある。乾電池を回路につなぐと、プラス端子とマイナス端子の間に坂道が作られ、その坂道を電気が流れる(プラス端子から電気が流れ出て、回路を通り、マイナス端子へ向かって流れる)。9 Vの乾電池のプラス端子は電圧が9 Vで、マイナス端子は電圧が0 V。1.5 Vの乾電池と比べると、プラス端子が6倍高い位置にある。ラズパイの場合、GPIOピンは3.3 Vの電圧になっていて、グラウンドは0 Vになっている。だから、電気はGPIOピンから流れ出て、回路を通り、グラウンドへ向かって流れる。
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高い位置から電気が流れるということは、電気の流れる「勢い」が強いということ。流しそうめんをするときの坂道は低い位置から水を流すが、ウォーターパークのウォータースライドは高い位置から水を流す。このとき、ウォータースライドの方が勢いよく水が流す。これと同じように、1.5 Vと9 Vの乾電池を比べると、9 Vの乾電池の方が勢いよく(6倍強い勢いで)電気を流す。このように電圧のことを、電気を押して流そうとする圧力(pressure)だと考えてもよい。だから電「圧」という名前になっている(とても良い訳語)。
- だいたいの場合、電圧が高いということは、流れる電流も強くなること。坂道が急になれば、一度に(1秒に)流れる電気の量も多くなるから。例えば、豆電球の付いた回路に1.5 Vの電池と3 Vの電池を使う場合、3 Vを使うと1.5 Vの場合に比べて電流が2倍になる。電流が2倍になると、豆電球が2倍の仕事をするので、光の明るさが2倍になる。