ボストン親子IoTワークショップ

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Raspberry Piとは

目次

Raspberry Piの紹介

Raspberry Pi(ラズベリー・バイ)という言葉を聞いたことのない方は、小型のコンピュータ(PC)だと思ってもらえばよいと思います。ただし、電源ケーブル、キーボード、マウス、モニタなどの周辺機器は一切付属しておらず、ケースにすら入っていないので丸裸の電子基板のままです。6.5 cm x 3 cmの大きさで、手のひらに乗り、iPhone 11の画面の1/4くらいです。下の写真を見ると、マウスよりも、USBハブよりも小さいのが分かると思います。重さはクレジットカード2枚分くらいです。

小さくて、軽くて、しかも値段は15ドル程度と安いのですが、作りはしっかりしています。内部で動くOS(基本ソフト)には、技術的に高度で安定したものが使われており、WindowsやMacOSと同等(かそれ以上)です。各種アプリやプログラミングの道具立ても充実しています。オモチャとして意図されているものではなく、プロレベルの用途にも対応可能でありながら、経済的、技術的なハードルをできるだけ下げているところが特徴です。

Raspberry Piは世界中で好評を得て膨大な利用者がいるので、数多くの周辺機器(センサー、カメラ、ライトなど)が存在し、価格が安く、簡単に接続できるのも特徴です。なにしろ裸の電子基板のままなので、接続はあっという間です。例えば、クリスマスツリー用のLEDライトを接続して、ライトを自動でON、OFFするアプリ(深夜になったらOFFにして、朝ONにするようなもの)は、子どもでもすぐに作れます。スピーカーとスイッチを接続して、目覚まし時計を作るのもすぐです。レゴでケースを作れば見た目もよくなるでしょう。カメラを接続して、植物の定点観測用カメラやセキュリティカメラ、ライフロガー(GoProの超簡易版)を作るのも簡単です。このように、さまざまな周辺機器を接続してコントロール(制御)する小さなコンピュータのことを、マイクロ・コンピュータ(マイコン)といいます。汎用的な(多目的に使える)マイコンとして、Raspberry Piは最も有名な代表格です。

さらなる応用例としては、気温、湿度、一酸化炭素、煙、PM2.5のセンサーなどを接続すれば、ちょっとしたスマートホーム・アプリを作れます。サーモグラフィを接続すれば非接触の体温計、ペットの首輪に加速度センサーかジャイロスコープを接続すればペットの行動トラッキングができます(ペット用の万歩計が作れる)。また、Raspberry PiのOSには、ソフトウェア・シンセサイザーがアプリとして入っているので(しかも何種類も)、楽器と接続してシンセサイザーを作ることもできます。ギターやウクレレのエフェクターを自作するのも楽しそうです。私の真冬に向けた密かな目標は、ワカサギ(スメルト)釣りの釣竿をRaspberry Piとモーターで電動化し、加速度センサーを振動検知に使って、魚が釣り糸に食いついたら自動で巻き上げるアプリを作ることです。そして来年の夏までには、BBQグリルで焼いている肉の(内部の)温度を測定するセンサーをRaspberry Piに接続し、ある温度に達したら所定時間のタイマーを自動でかけるアプリを作って、「精密化BBQ」の達人になりたいのです。どちらも妄想だけで、実現への行動が伴っていませんが。。。

ともあれ、Raspberry Piの応用範囲がとても広いということをご理解頂けたらと思います。その初歩の初歩を、未経験者がつまずかずに学べるようにするのが本ワークショップの目的です。

ちなみに、Raspberry Piを「ラズベリー・パイ」と言う(書く)のは長いので、「ラズパイ(Raspi)」と言うことが多いです(日本語でも英語でも)。英語圏には、Raspi以外に、RPi(アール・パイ)やPi(パイ)と言う人もたくさんいます。好みの問題ですが、私は単純にパイと呼ぶのが好きです。

少し詳しいRaspberry Piの紹介

ここでは、ラズパイに関して、もう少し技術的に詳しいことがらを書きます。読み飛ばしても問題ありません。

ラズパイは、電源を入れると自分自身で起動し、USBやHDMIとの接続インターフェイスを持ち、現代的なOSを動作させられる、いわゆる普通のコンピュータです。それがひとつの電子基板(ボード)に収まっているので、「シングル・ボード・コンピュータ」と呼ばれることもあります。

ラズパイにはいくつかの機種がありますが、このワークショップでは、最も小さくて安いボード「Rasberry Pi Zero」を使います。これには次のような3つのバリエーションがあります。

機種 特徴
Rasberry Pi Zero ラズパイ機種の中で最もシンプルで安い。5ドル
Rasberry Pi Zero W Zeroにワイヤレス通信機能を加えたもの。10ドル
Rasberry Pi Zero WH Zero WにGPIOヘッダーをハンダ付けしてあるもの。15ドル

このうち、このワークショップでは「Rasberry Pi Zero WH」を使います。自宅ではんだ付けができる方はZero Wを買って、GPIOヘッダーをボードにハンダ付けしてください。それ以外の方は「Rasberry Pi Zero WH」を買うと手っとり早いです。Zero WHの特徴を以下にまとめ、ボードの構成の略図を載せておきます。

消費電力が少ないのも特徴です。周辺機器を外して、アイドル状態(電源はONだが何もしていない状態)にすると約100 mAの電流、通常で約150 mA、最大でも250 mAとのことなので、消費電力は0.5 Wから1.25 Wです(ご興味があればここを参照)。MacBook Proの一番小さい機種は30Wなので、ラズパイの消費電力はその約1/40です。LED電球ひとつで8 Wくらいですから、仮にラズパイの電源を一年中付けっぱなしにしても、さほどの電気代にはなりません。IoT機器を作るのに適したコンピュータだということができます。

ラズパイの中では、Raspberry Pi OSというOSが動作します(以前はRasbian (ラズビアン)と呼ばれていました)。このOSは無料でダウンロードして使うことができます。これは、Debian(デビアン)というOSをラズパイ用にカスタマイズしたもので、Debian自体はLinux(リナックス)というOSの一種(一配布形態)です。Linux、Debianとも、IT業界のトップレベルの技術と安定度を誇るOSなので、Raspberry Pi OSについても同じことが言えます。

高い技術が含まれていながら、Raspberry Pi OSが要求するメモリ量は、上記の通り500 MBでしかなく、ストレージ(SDカードの容量)も16 GBで十分です。メモリに最低4 GB(実際には8 GB)要求するWindowsやMacOSに比べると、驚くほどの「軽さ」(省資源)です。

Raspberry Pi OSと比べてWindowsやMacOSに軍配の上がる点は、使い勝手(ユーザ・インターフェイス)でしょうか。Raspberry Pi OSのユーザ・インターフェイスは、お世辞にも見栄えがするわけではありません(派手さはありません)。モニターの画面上の「見た目」はいたってシンプルですが、機能的には必要なものがきちっと揃っていて、質実剛健。IoT機器を実際に動かす時には、モニターなしで動作するので、質実剛健で必要十分なのだと思います。

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