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LEDを保護する抵抗のオーム値の計算方法

目次

ここでは、LEDを点灯させる回路の中で使う抵抗の抵抗値(オーム値)をどうやって計算するか説明します。

まずは、いちいち計算するのが面倒だと思う場合は、1 kΩ(1,000 Ω)を使ってください。もし1 kΩを使ってLEDが点灯しなかったら、それより小さな値の抵抗を(大きい順に)試してください(330 Ω、220 Ωなど)。

1 kΩの抵抗を使えば、まずLEDを壊してしまうことはありません。しかし、LEDを壊さない範囲内で十分明るくLEDを光らせているわけではありません(必要以上に大きな抵抗値を使っているかもしれません)。使う抵抗値が小さい方がLEDは明るく光ります。適切な抵抗値を知るには、以下の方法で算出してください。

なお、以下を読み進める前に、「LEDを点灯させる回路に抵抗が必要な理由」を読んでおいてください。

直列回路内の電圧

LEDを保護する(壊さないようにする)目的で抵抗を使う場合、以下のような回路を作るのが典型です。これはワークショップ中に作った回路です。

このように、LEDや抵抗などの部品が、回路の中で順番に(数珠つなぎで)つながっているとき、その部品の接続方法のことを直列接続(serial connection、series connection)といいます。また、各部品が直列接続されている回路のことを直列回路(series circuit)といいます。直列回路には、電気の通り道(ワイヤ)の枝分かれ(分岐)がありません。上記の回路例は、LEDと抵抗から構成される直列回路です。

直列回路では、各部品にかかる電圧の合計が、その回路全体にかかっている電源電圧と等しくなります。上記の例では、LEDにかかる電圧と抵抗にかかる電圧の合計が、電源電圧に等しくなります。ラズパイのGPIOピンを使った回路では、電源電圧は3.3 Vです。しがたって、

LEDにかかる電圧 + 抵抗にかかる電圧 = 3.3 V

となります。別の言い方をすると、電源電圧3.3 Vが各部品へ分配されます。電圧が分配されるので「分圧」とも呼ばれます。

直列回路内の電流

先に書いたように、直列回路には、電気の通り道に枝分かれ(分岐)がありません。ラズパイのGPIOピンから電気が出て、複数の部品を通りながら一本道を流れ続けて、ラズパイのグラウンドに戻ってきます。この一本道のすべての場所で、同じ量の電流が流れます。どこか特別な場所だけで電流が多く流れたり、別の場所で電流が少なく流れることはありません。

ですから、以下の回路で、抵抗とLEDには同じ量の電流が流れます。

さらに言えば、以下のすべての場所で、常に同じ電流が流れます。

抵抗値の計算:LEDにかける電圧と流す電流を決める

LEDを保護するための抵抗値を計算するには、まずLEDにかける電圧を決めます。「LEDを点灯させる回路に抵抗が必要な理由」に書いたように、LEDにどのくらいの電圧をかけるべきかは、製造メーカーが「定格電圧」として公表しています。例えば、私が買った電子工作キットには以下のような記述がありました。

LEDの色 電圧の範囲 電流の範囲 推奨電流
Red 1.9 - 2.2 V 5 - 18 mA 9 mA
Green 1.9 - 2.5 V 4 - 14 mA 7 mA
Yellow 1.9 - 2.5 V 5 - 15 mA 8 mA
Blue 2.9 - 3.4 V 5 - 10 mA 5 mA

ここでは例として赤色のLEDを使う場合を考えます。この表には、1.9 Vの電圧をかけると点灯し始め、その時に5 mAの電流が流れると書かれています(この表の読み方は「LEDを点灯させる回路に抵抗が必要な理由」を参照)。そこで、LEDにかける電圧を1.9 Vにしてみましょう。そしてLEDには5 mAの電流が流れると想定します。

先に書いたように、直列回路では電源電圧がLEDと抵抗に分圧されます。電源電圧は3.3 Vで、LEDには1.9 Vがかかるようにしたいので、抵抗にかかる電圧は1.4 V(3.3 V - 1.9 V)にする必要があります。また、LEDに5 mAの電流が流れる想定をしているので、抵抗にも5 mAが流れる想定になります。先に書いたように、直列回路のどの場所にも必ず同じ量の電流が流れるからです。

抵抗値の計算:オームの法則を使う

ここまでで、抵抗にかかる電圧が1.4 V、抵抗に流れる電流が5 mAとなりました。この2つの値を使って、1.4 Vかかったときに5 mA流す抵抗値がいくつなのかを計算します。これにはオームの法則というのを使います。これは、以下のような式になります。

抵抗値(Ω) = 電圧(V)/ 電流(A)

ここで「/」は割り算の記号です(電圧 ÷ 電流)。5 mA = 0.005 Aなので、

抵抗値 = 1.4/0.005 = 280 Ω

となります。つまり、280 Ωの抵抗を使えば、LEDにかかる電圧を1.9 Vに調節できて、その結果LEDに5 mA流れるようになります。

LEDにかける電圧と流す電流の選び方

上記の例では、LEDにかける電圧を1.9 V、流す電流を5 mAにしましたが、別の値の組み合わせを使うこともできます。例えば、電圧の範囲が1.9 - 2.2 Vとなっているので、その中間の値(2.05 V)を使ってもいいでしょう。ただし、LEDに2.05 Vかけたら電流がどれだけ流れるのかは、上記の表からは分かりません。したがって、電流の範囲(5 - 18 mA)の中間値(11.5 mA)くらいなのでは?と当たりをつけることになります。LEDにかける電圧が2.05 Vなので、抵抗にかかる電圧は1.25 V(3.3 - 2.05)となり、流れる電流は11.5 mAです。オームの法則を使って、

抵抗値 = 1.25/0.0115 = 108 Ω

となります。つまり、108 Ωの抵抗を使えば、LEDにかかる電圧を2.05 Vに調節できて、その結果LEDに11.5 mA流れるようになります。

ここまで、抵抗値の計算例を2つ説明しました。計算結果をまとめると次のようになります。

抵抗値 LEDにかかる電圧 LEDに流れる電流
280 Ω 1.9 V 5 mA
108 Ω 2.05 V 11.5 mA

この表から、LEDにかける電圧を0.15 V増やすだけで、流れる電流が倍以上になることがわかります。このようにLEDは、電圧を少し変化させるだけでも敏感に影響を受ける部品なので、使う電圧と電流の値は保守的に選ぶのがよいと思います。つまり、大きめの抵抗値を使って、LEDにかかる電圧を少なめにし、LEDに流れる電流を少なめにするということです。

実際のところ、上記の表の11.5 mAは、推奨電流の9 mAを超えています(最大許容電流の18 mAよりは低いですが)。9 mAを2.5 mA上回っても、LEDが壊れる心配や寿命が縮まる心配をする必要はありませんが、もう少しLEDに流れる電流を少なくするには、抵抗値をもう少し高くします。巷の電子工作キットには220 Ωの抵抗が入っていることがよくありますので、これを使えばLEDに流れる電流は5 mAと11.5 mAの間の値になるはずです。

抵抗値を計算してくれるWebサイトやスマホアプリ

LEDにかける電圧と流す電流を指定すると抵抗値を計算してくれるWebサイトやスマホアプリがたくさんあります。いちいち手で計算せずに済むので便利です。

Webサイト:

スマホアプリ:

回路の中の抵抗の位置

これまでは、回路の中で、抵抗をLEDのプラス端子側に置いていました。つまり、電流がLEDに「入る前」に抵抗を置いていました。

電源から流れてきた電流を抵抗で減らしてLEDに流すイメージが直感的に分かりやすいので、とても典型的な回路設計です。

ただし、実は抵抗の位置は重要ではありません。電流がLEDから「出た後」に抵抗を置いても、抵抗はLEDをきちんと保護します。つまり、LEDのマイナス端子とグラウンドの間に抵抗を置いても全く問題ありません(マイナス端子側に抵抗をつけるとプラス端子側に電流がたくさん流れ込んでLEDが壊れそうな気がするかもしれませんが)。理由は、直列回路では電流はどこでも同じ量だけ流れるからです。

LED自体の抵抗値

オームの法則を使っていろいろと計算していると、ふと「LED自体の抵抗値はいくつなのか」と疑問に思うかもしれません。鋭い疑問です。

もちろんLEDにも抵抗値はあります。しかし、その抵抗値は常に一定ではないので、製造メーカーが抵抗値をデータシートに記していることはほとんどありません。抵抗値が一定でない理由を一言で言えば、LEDが半導体だからです(「導体、絶縁体、抵抗、半導体」を参照)。古典的な電気回路部品は抵抗値が一定なのですが(例えば抵抗の抵抗値は一定です)、LEDのような半導体の抵抗値は電圧によって変化します。つまり、かかる電圧によって流れる電流が大きく変化します。例えば、電圧が低いときには抵抗値がとても高くほとんど電流を流さないのですが、電圧を徐々に上げていくと抵抗値が下がり電流を流します。

先に示した定格値の表を見ると、電圧1.9 Vで電流5 mAが流れ、電圧2.2 Vで電流18 mAが流れることが分かります。

LEDの色 電圧の範囲 電流の範囲
Red 1.9 - 2.2 V 5 - 18 mA

つまり、電圧が1.9 Vのときの抵抗値は、

抵抗値 = 1.9 / 0.005 = 380 Ω

で、電圧が2.2 Vの時の抵抗値は、

抵抗値 = 2.2 / 0.018 = 122 Ω

となります。このように、電圧を0.3 Vあげるだけで抵抗値が3分の1以下に一気に下がっていることが分かります。このように、LEDの抵抗値は電圧に応じて大きく(非線形に)変化するので、データシートに記されることはほとんどなく、その代わりに電圧をどのくらいかけると電流がどのくらい流れるかが記されています。

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