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LEDを点灯させる回路に抵抗が必要な理由

目次

抵抗とは

LEDを点灯させる回路には、ほぼ必ず抵抗(resistor)という部品を使わねばなりません(抵抗器と呼ぶ場合もありますがここでは同じものを指しています)。以下のような見た目の部品です。

この抵抗を、以下のように回路の一部として使います。これはワークショップ中に作った回路です。

このように、GPIOピンを通してラズパイから出た電流は、抵抗の中を流れ、その後LEDの中を流れ、最後にグラウンドへ戻ってきます。

抵抗を使う理由は、LEDに必要以上の電流を流すと壊れたり、寿命が縮まってしまうからです。最悪の場合、過電流のため熱で溶けたり、軽く爆発したりします。以下の動画を見ると、どう壊れるかが分かると思います。

LEDはとても省電力で、流れ込む電流量に敏感なため、「壊れない程度の電流量(アンペア数)」あるいは「想定されている電流量(アンペア数)」を事前に把握しておいて、それ以上の電流がLEDに流れ込まないような回路を作らないといけないのです。

抵抗がどのようにLEDを保護するのか

ラズパイのGPIOピンを使う回路には3.3 Vの電圧がかかります。この回路でLEDだけを使うと、そのLEDに3.3 Vがかかります。ほとんどのLEDにとって3.3 Vはとても高い電圧なので、必要以上の電流が流れこんでしまいます(電圧が高いと電流が増える理由については「電気について:電圧、電流、電力など」を参照)。LEDが壊れないように(寿命が長くなるように)するには、より少ない電流が流れこむようにしなければならず、そのためにはLEDにかかる電圧をもっと下げなければなりません。この目的のために抵抗が使われます。

抵抗というのは、わざと電気を流しにくくする障害物のようなものです(もう少し詳しい抵抗の説明は「導体、絶縁体、抵抗、半導体」を参照)。回路の中で電気が流れにくい部分(部品)には電圧がかかります。電圧とは電気を流そう、流そうとする圧力のことなので、電気の流れにくい部品にほど高い電圧がかかります(電圧とは何かについては「電気について:電圧、電流、電力など」を参照)。

電気の流れにくさ(抵抗)と電圧の関係を直感的に理解するために、ホースで水まきをすることを想像してください。水が電気(水の流れが電流)、ホースが電気の流れる回路だと思ってください。蛇口を開けてホースに水を流している状態は、回路に電気が流れている状態と同じことです。ここで、ホースのある部分を指でつまんで、水の通り道を狭くします。わざと水が流れにくくしたこの部分が、電気回路では抵抗に相当します。指でつまんだ部分には水圧がかかります。これは、狭くなっている水の通り道を広くしようとする(元通りにしようとする)力です。ホースの他の部分と同じように水が流れようとするので水圧が生じます。電気回路では、これが抵抗にかかる電圧に相当します。また、ホースをつまむ力を変えると、水の通りにくさを調節できます。水が通りにくいほど高い水圧がかかります。これと同じように、電気回路では電気の流れにくい部分(部品)にほど高い電圧がかかります。

回路の中でLEDと抵抗を使うと、LEDと抵抗の両方に電圧がかかるようになります。ラズパイのGPIOピンを使う回路では、3.3 Vの電圧のうち一部が抵抗にかかり、残りがLEDにかかります。つまり、抵抗のおかげで、LEDにかかる電圧を下げることができるのです。電圧が下がれば流れこむ電流は減ります。こうすることで、LEDが壊れずにすみます。

このように、LEDと併用する抵抗は、LEDが壊れないように保護する目的で使われるので「保護抵抗」(protection resistor)とか、「電流制限抵抗」などと呼ばれることがあります。

定格電流と定格電圧

抵抗とは、電気の流しにくさがある一定の水準になるように人為的に作られた部品です。この電気の流しにくさ(resistance)は「抵抗値」として数値化され、オーム(ohm、Ω)という単位を使います。抵抗値(オームの値)が高いほど、電気を流しにくいということです。つまり、抵抗値の高い抵抗をLED保護のために使うと、抵抗に高い電圧がかかるので、LEDにかかる電圧は相対的に低くなり、LEDに流れこむ電流も減ります。したがって、LEDを壊してしまうリスクを低く抑えることができます。

ただし、LEDに流れる電流が減ると、LEDの光は暗くなり、電流が少なすぎると、LEDは点灯しません。したがって、LEDを使うには電流を多すぎず、少なすぎず流す必要があります。つまり、適切な量の電流が流れるように、LEDにかかる電圧をうまく調節する必要があります。

LEDは、低い電圧では電気をほとんど流さず発光しません。しかし、ある一定の電圧を越えると、電気が急に流れ始めて発光します。この閾値(しきいち: threadhold)となる電圧を「順方向電圧(順電圧)」といい、その電圧でLEDに流れる電流を「順方向電流(順電流)」といいます。それぞれ、forward voltage、forward currentの訳で、Vf、Ifなどと略されることがあります。

LEDの製造メーカーが用意しているデータシートを見ると、順電圧(Vf)や順電流(If)が書かれています。これ以外に、電圧と電流の範囲などが示されていることがあります。例えば、私が買った電子工作キット(のマニュアル)には以下のような記述がありました。

LEDの色 電圧の範囲 電流の範囲 推奨電流
Red 1.9 - 2.2 V 5 - 18 mA 9 mA
Green 1.9 - 2.5 V 4 - 14 mA 7 mA
Yellow 1.9 - 2.5 V 5 - 15 mA 8 mA
Blue 2.9 - 3.4 V 5 - 10 mA 5 mA

この表から、赤いLEDの順電圧(Vf)が1.9 V、順電流(If)が5 mAであることが分かります。また、電圧を2.2 Vかけると電流が18 mA流れることが分かります。この電圧と電流の範囲は、LEDがその能力を発揮しつつ壊れない保証範囲です。逆に言えば、赤いLEDに2.2 V以上電圧をかけると18 mA以上電流が流れて、壊れる可能性がありますよ、ということです。また、推奨電流(typical current、recommended current)というのは、メーカーが我々に使って欲しいと思っている電流で、最大許容電流の半分くらいになっていることが多いようです。

順電圧(Vf)、順電流(If)、電圧・電流の範囲、推奨電圧・電流などのようなメーカーによる公表値のことを「定格(rarting)」といいます。具体的に定格が何を指しているかはメーカーによって違います(私はそう理解しています)。メーカーによっては順電圧(Vf)と順電流(If)だけを公表しており、その場合はVfとIfが定格電圧(rated voltage)、定格電流(rated amperage)になります。電圧・電流の範囲だけが示されている場合は、範囲そのものが定格なのかもしれないし、範囲の真ん中あたりの値が定格なのかもしれません。推奨電圧・電流が示されていれば、それが定格電圧・電流でしょう。また、「定格電圧・電流は2 V、15 mA」(rated at 2 V and 15 mA)などと記されている場合もあります。これがVfとIfなのか、推奨値なのかは不明です。

ともあれ、与えられた定格値(公表値・推奨値)か、それに近い値でLEDを使うことが重要です。電圧、電流の範囲だけが示されている場合には、上限キリギリの値を使うのではなく、真ん中あたりの値を使います。LEDの動作には個体差(ばらつき)があり、また温度などの動作環境によっても動作に変化があるので、上限キリギリの値を使っていると、うっかり制限範囲を超えてしまうことがあります。LEDは、0.1Vの電圧の変化にも敏感に影響を受ける部品なので、使う電圧と電流の値は保守的に選ぶのがよいと思います。つまり、大きめの抵抗値を使って、LEDにかかる電圧を少なめにしておくということです。

使用するLEDにとって適切な抵抗値は、事前に計算して求めることができます。詳細は「回路内に必要な抵抗の値」を参照してください。いちいち計算するのが面倒だと思う方は1 kΩ(1,000 Ω)を使ってください。もし1 kΩを使ってLEDが点灯しなかったら、それより小さな値の抵抗を(大きい順に)試してください(330 Ω、220 Ωなど)。

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